「砂が足りない」という話を、僕はつい最近知った。
砂は世界で1年に約500億トンも使われていて、その砂が今、足りなくなってきているんだ。
しかも砂は、水の次に多く採られている自然の資源でもある。
原因は、建物や道路に使う量が増えたのに、コンクリートに向く砂は川や海岸のものが中心だということ。
砂漠(雨が少なく、植物が育たないか育ちにくい土地。)には砂がたくさんあるけど、その砂はそのままではコンクリートに向かないんだ。
今回は、足元にある砂がどこから来て、この先どうなっていくのか、僕と一緒に未来を覗き見てみよう。
目次
砂は世界で1年に500億トン使われている
人間が飲める淡水が少ないという話はよく聞いていたけど、砂が少ないという話は、それに比べると霞んで見えるくらい聞かない。
でも実際に、世界で使われる砂は1年に約500億トンにまでなっているんだ。
1人あたりに直すと1日約17kgで、10kgの米の袋なら1.7袋分くらいになる。
一人ひとりが毎日それだけの砂を使っている計算だと考えると、かなりの量だよね。
砂の使い道は、コンクリートやガラス、建物の材料など。
そして砂を使う量は、20年ほどで3倍になった。
量が増えたのは、人口が増えて、都市が大きくなっているからなんだ。
導入でも書いたけど、砂は水の次に多く採られている自然の資源だ。
水の話はよく聞くのに、そのすぐ次に来るのが砂というのは、ちょっと意外だよね。
考えてみたら、人類が発展するにつれて建物が増えたり、昔のものから作り変えられたりしているから、納得できる話だ。
でも、普段そこまで考える人はなかなかいないと思う。
じゃあ、そんなに砂を採ると何か困ることがあるのか?
困ることはあるんだ。
砂は、自然に増えるよりずっと速いペースで採られている。
川や海岸の砂を採りすぎると、川岸や海岸が削られて、地下水の高さも下がってしまう。

たとえばメコン川(中国から東南アジアを流れて南シナ海へ注ぐ川。)では、砂を採ったことで川の下流の土地が沈み、田畑に塩水が入っている。
スリランカでは、川の砂を採ったことで水の流れが逆になって、海の水が内陸まで入り込んだんだ。
海岸の砂を採ると、嵐などに弱くなり、小さな島が消えることもある。
足元にあって当たり前に見える砂でも、採りすぎれば土地のほうが変わってしまうんだ。
砂不足の原因は、コンクリートに向く砂が限られていること
砂なんてどこにでもあるのに、どうして足りなくなるんだろう?
実は、どこにでもある砂が全部使えるわけではないんだ。
砂と砂利は、建物や道路に使うコンクリートの材料として大量に使われている。
コンクリートの体積のうち、約7割は砂と砂利なんだ。
つまり、砂が足りなければコンクリートも作れないということは、なんとなく想像がつくよね。
そしてコンクリートに向く砂は、川や海岸の砂が中心になる。
ところが川の砂だけでは、増え続ける需要をまかなえない。
じゃあ海の砂を使えばいいかというと、そう簡単でもない。
海の砂は、塩分をよく洗い流さないと、コンクリートの中の鉄が錆びて、数十年後に建物が崩れるおそれがあるんだ。
だから海の砂を使うには、塩分を洗い流す手間がかかる。
ここまでで、コンクリートに使える砂が限られていることはわかってもらえたと思う。
そうなると、砂漠の砂を使えばいいのでは?
という疑問が出てくる。
砂漠の砂がコンクリートに使えないのはなぜか
砂漠にはあれだけ砂があるのに、なぜコンクリートには使えないのか。
それは、砂漠の砂は粒が細かく、大きさがそろいすぎているからなんだ。
僕は、砂はどこにでもあると思っていたけど、よく見ると大きさや構成の違いが大きいとも思っていた。
たとえば海岸の砂には、ガラスが混じっていたり、いろいろな石(花崗岩や人工の石など)が混じっていたりするから、成分が違うんだろうなと思っていた。
砂漠の砂は触ったことがない。
かなり粒が小さくて、さらさらしていそうなイメージがある。
水を含ませても、泥団子のようには固まらなさそう。
それくらい乾燥していて、さらさらしているイメージだ。
コンクリートに使う砂には、大きな粒から細かい粒までが、決まった割合で混ざっていることが求められる。
大きさのそろった砂でコンクリートを作ると、粒どうしのすき間が埋まらず、外からの力に弱いコンクリートになってしまうんだ。
逆にコンクリートに向くのは、大小の粒が混ざった砂だ。
大きい粒のすき間に小さい粒が入ることで、コンクリートは強くなる。
大きさのそろった玉だけを箱に詰めるとすき間が残るけど、小さい玉を混ぜるとそのすき間が埋まる、と考えるとイメージしやすいと思う。

砂漠の砂は、風に吹かれ続けて粒が丸くなっていて、くっつきにくいから使えない、と説明する国連の機関の資料もある。
一方で、角の取れた丸い粒で、大きさがばらばらに混ざった砂がコンクリートに向く、と書く日本の地質の研究所の資料もあるんだ。
丸い粒でも向いている砂があるなら、砂漠の砂がそのままでは使いにくい主な理由は、丸さよりも、細かさと大きさのそろいすぎのほうかもしれない、と僕は思っている。
ただ丸さが関係ないとは言い切れなくて、粒が丸くなめらかなことは、セメントとのくっつきを弱めるかもしれない、と見る研究もある。
それに、砂漠の砂は塩分を多く含むことがある、と書く研究もあるんだ。
じゃあ、砂漠の砂はまったく使えないのか?
混ぜる量を抑えれば使える、という研究がある。
ふつうの砂の4割までを砂漠の砂に置き換えても、コンクリートの性質は悪くならなかった、と研究のまとめは書いている。
4割というのは、砂10杯のうち4杯だ。
ただ、すべてを砂漠の砂にすると、粒の細かさと混ざり方の悪さのせいで、強さが落ちてしまう。
もうひとつ、東京大学の研究室は、セメントを使わずに、砂どうしを直接くっつけて固める方法を作った。
その方法では、砂にアルコールと薬品を加えて、閉じた容器の中で熱するんだ。
研究室は、この方法で砂漠の砂のような使いにくい砂も材料にできると考えている。
ただ、実際の建物に使われた話ではないことは覚えておいてほしい。
日本の砂は、川から海へ、そして岩を砕く砂へ移ってきた
ここまで読むと、日本は大丈夫なのか、砂を輸入しているのか、が気になるところだよね。
日本は、使う砂の場所を変えながら、足りない分を岩を砕いて作る砂で埋めてきたんだ。
昔の日本では、川の砂と砂利が、コンクリートの材料の大半だった。
でも川の砂は、採りすぎて減ったことと、採取の決まりが厳しくなったことで、大きく減ってしまった。
その代わりに新しく使われるようになったのが、海の砂と山の砂だ。
ところが瀬戸内海では、海の砂を採ることを県が次々に禁止していった。
広島県は1998年から海の砂の採取を禁止し、2000年代に入ると岡山県・香川県・愛媛県も禁止した。
海の砂の代わりに使われるようになったのが、岩を砕いて作る砂だ。
2005年には、日本で使う砂や砂利などの材料の6割以上が、岩を砕いて作ったものになった。
1967年ごろは、川や山などの天然の砂・砂利が全体の約7割だったから、中身が大きく入れ替わったことになる。

砂を採っているところは見たことがない。
コンクリートを作る工場に、ストックとして積まれている小石の山なら見たことがある。
じゃあ、外国から輸入はしていないのか?
輸入はしているけど、割合は小さい。
四国では、2000年度に使った砂のうち、輸入した砂は0.6%だった。
0.6%は、砂1,000杯のうち6杯だ。
関西の工場では、2006年度まで中国から輸入した川の砂を使っていたけど、その中国の川の砂は輸出が禁止された。
それでも、長崎県が2020年にまとめた資料では、答えた33の県のうち46%が、将来は砂の代わりの材料を考える必要があると答えている。
将来のことを考えている県が、半分近くあるんだ。
じゃあ、「砂不足は嘘」っていう話は本当なのか?
砂そのものが地球からなくなる、という意味なら当たっていない。
砂の業界のコンサルタントからは、足りないのは、使える砂を、使う場所の近くで、手ごろな値段で取れる量だ、という見方がある。
砂は重くかさばるので、遠くから運ぶほど値段が上がる。
岩を砕けば、コンクリートに向く砂を作ることはできるけど、手間がかかるぶん天然の砂より高くなってしまう。
国連の機関も、今から手を打てば、砂の危機は避けられると言っている。
だから「砂不足」と「砂はなくならない」は、どちらも半分ずつ当たっている、と僕は思っている。
ここまで読んでくれた人には、この2つがぶつかる話ではないことも伝わったと思う。
鳥取砂丘の砂を持ち帰ってはいけないのはなぜか
砂の話をしていると、鳥取砂丘(風に運ばれた砂が積もってできた丘。)の砂はちょっとだけなら持ち帰ってもいいのか、と気になる人もいると思う。
答えはだめなんだ。
鳥取県は、砂丘の砂の持ち帰りを、自然公園法(国立公園などの景色を守るための法律。)で許可が要る、または禁止されている行為に挙げている。
自然公園法は、国立公園などの景色を守るための法律だ。
僕は鳥取砂丘には行ったことがない。
でも鳥取砂丘の砂を持ち帰ってはいけないことは、だいぶ昔に『水曜どうでしょう』で知った。
だいぶ前に見たシーンなので、ちゃんとは覚えていない。
覚えているのは、鳥取砂丘で喜んで砂を持ち帰り、あとで持ち帰りが違反だとわかって、出演者が謝っていた、という流れだけだ。
鳥取砂丘は、山陰海岸国立公園(京都・兵庫・鳥取の日本海側に広がる国立公園。)の中にある。
国立公園の中で、特に景色を守る場所では、土や石を採るのに国の許可が要るんだ。
そして鳥取砂丘の天然記念物の範囲には、その中でもいちばん厳しく景色を守る場所が含まれている。
許可なく土や石を採ったときの罰則は、1年以下の拘禁刑(懲役と禁錮をまとめて、2025年6月に始まった刑。)または100万円以下の罰金だ。
100万円は、砂丘での落書きなど、条例で禁止された行為によっては払わされるお金の上限の5万円と比べると、20倍だ。
鳥取県は、砂の持ち帰りもこれに当たるものとして示している。
罰則にある拘禁刑は、懲役と禁錮をまとめたもので、2025年6月1日から、それまでの懲役と禁錮に代わって使われるようになった刑だ。
じゃあ、鳥取砂丘の砂を持ち帰ってはいけないのは、砂が足りないからなのか?
そうではないんだ。
持ち帰ってはいけないのは、国立公園と天然記念物として、砂丘の景色を守るためだ。
鳥取県は、砂の上の落書きやゴミのポイ捨てなども、条例で禁止している。
同じ砂でも、建物のために足りなくなっている砂と、景色として守られている砂では、話がまったく違うことはわかってもらえると思う。

足元の砂は、もう「いくらでもあるもの」ではない
世界で使われる砂は1年に約500億トンで、20年ほどで3倍になった。
その一方で、砂漠の砂はそのままでは細かく、大きさがそろいすぎていて使いにくい。
日本は川から海へ、海から岩を砕く砂へと、使う砂を変えてきた。
そして今も、砂漠の砂を混ぜて使う研究や、砂どうしを直接くっつける研究が進んでいる。
ここまで読んでくれた人には、足元の砂が「いくらでもあるもの」ではないことが伝わったと思う。
僕は普段から「これはこういう砂、こういう石、こういう岩なんだな」と思いながら見ているので、調べたあとも、見る目はたぶん変わらない。
でも読んでくれたみんなには、これからそういう目で身の回りの砂や石を見てほしい。
足元のありふれた砂も、どこから来て、この先どう作られていくかが、少しずつ変わり始めているんだ。
今回も未来を覗き見れたかな?それじゃ、バイバイ!
参考にした資料
・Sand crisis looms as world population surges, UN warns(Reuters, Malay Mail, 2022年4月26日)
・Sand and Sustainability: 10 Strategic Recommendations to Avert a Crisis(国連環境計画 UNEP, 2022年)
・砂同士を直接接着した次世代コンクリートの開発(東京大学 生産技術研究所 酒井研究室)
・海底細骨材資源の話(有田正史, 地質ニュース, 地質調査所)
・材料規格(さいたま市 土木工事共通仕様書 第5編 材料編)
・国有林104・105林班開発事業に関する検討調査 調査報告書 資料7(千葉県, 2008年2月)
・砕砂を用いたコンクリート活用の手引き Ⅱ資料編(長崎県 土木部, 2020年6月)
・四国地区骨材資源対策の基本方針について(四国地区骨材資源対策検討会, 2003年3月)
・瀬戸内海の海砂利採取規制の実情と今後の方向(廣瀬肇, Ocean Newsletter 第70号, 笹川平和財団 海洋政策研究所, 2003年7月5日)
・舗装用骨材資源の有効利用に関する研究(中間報告)(国土交通省 近畿地方整備局 新都市社会技術融合創造研究会)
・自然公園法の一部を改正する法律 新旧対照表(環境省, 2021年)





