8月、ニュースでうるう秒(地球の自転のズレを1秒単位で直す調整。)が廃止されると知った。
そんな話になっているとは思っていなかった。
うるう秒というのは、地球の自転のズレを1秒単位で直す調整のこと。
「1秒くらい誤差だろ」と思う人は多いと思う。
2026年10月、世界の時刻のルールを変えることが決まったんだ。
2027年5月20日から、時計にうるう秒を入れなくなる。
そして地球の回転とのズレは、最大1時間までためておくことになった。
毎日当たり前に動いている時計の裏側に、こんな駆け引きがあったなんて僕は知らなかった。
今回はその1秒の裏側を、僕と一緒に未来を覗き見てみよう。
目次
うるう秒が必要だったのは、地球の回り方が一定ではないから

そもそも時計に1秒を足していたのは、時計と地球の進み方が合わないからなんだ。
今の時計の基準は、セシウム(原子時計で1秒の長さを決めるのに使われている元素)という原子の性質を使った原子時計(原子の振動を利用した超高精度な時計。)だ。
1967年に、1秒の長さはこのセシウム原子時計で決めることになった。
ところが地球の回り方、つまり自転は、季節や地球の内部で起きることなどで、速くなったり遅くなったりする。
だから原子時計の時刻と、地球の回転で決まる時刻が、少しずつずれていくんだ。
そのズレが0.9秒を超えないように時計に1秒を足すのが、うるう秒になる。
うるう秒は1972年に始まった。
最初のうるう秒は日本時間で1972年7月1日、27回目が2017年1月1日だ。
27回というのは、1972年から2017年までの約45年のあいだの話なんだ。
日本では、うるう秒は朝9時の直前に入る。
そしてこの27回とも、1秒を「足す」うるう秒だった。
2018年から2026年まで、うるう秒は入っていない。
2027年1月1日にも入らない。
地球の回り方が変わる例として、2011年の東日本大震災(2011年に発生した巨大地震と津波による災害。)で1日の長さが約1.8マイクロ秒(1秒の100万分の1の長さを表す時間の単位)短くなったはずだ、という計算がある。
実際に測った値ではなく、計算ではそうなる、という推定だ。
1.8マイクロ秒は、1秒の約56万分の1。
地球の回り方は、それくらい細かいところで揺れているのかもしれない。
うるう秒って、本当は0.何秒のズレなんだよね?
それを1秒毎で辻褄合わせてるのも不思議だなとは思った。
でもそのほうが毎回計算をしなくてすむから楽だろうけどね、と僕は思っている。
ただ、1秒くらい足しても困ることはなさそうに見えるよね。
ここからは、その1秒で何が起きていたのかを見ていこう。
1秒を足すと、機械の何が困るのか

たった1秒でも、機械にとっては大きなつまずきになることがあるんだ。
2017年1月1日、うるう秒が入ったとき、Cloudflare(ウェブサイトの表示や通信を支える米国企業。)のDNS(インターネット上の住所を教える仕組み。)で障害が起きた。
Cloudflareはウェブサイトの表示や通信を支える米国企業で、DNSはインターネット上の住所を教える仕組みのこと。
このことは、Cloudflareが自分で公式ブログに書いている。
障害が起きたのは、UTC(協定世界時(世界の時計が基準にしている、国際的に決めた時刻))の元日0時だった。
UTCは世界の時計の基準になる時刻で、日本時間でいうと元日の朝9時になる。
CloudflareのDNSのプログラムの中で、0以上になるはずの数がマイナスになり、プログラムが止まったんだ。
原因は、「時間は逆戻りしない」という思い込みで書かれたコードだった。
2つの時刻の差は、悪くても0だと決めつけていたんだ。
そのマイナスは、うるう秒と、時刻をならす処理が重なって生まれた。
影響が出たのは一部の利用者だけで、いちばん多いときでDNSの問い合わせの約0.2%、ウェブの読み込みの1%未満がエラーになった。
0.2%は、1,000回の問い合わせのうち2回くらいだ。
2012年のうるう秒でも、一部のサーバーで処理の負荷が急に上がったり、ウェブのサービスが止まったり、航空関係のシステムに影響が出たりしたと報告されている。
それに、金融の高速の取引はマイクロ秒の単位で動いている。
1マイクロ秒は100万分の1秒で、1秒はその100万倍だ。
そう考えると、1秒がどれだけ大きいかがわかると思う。
長さや時間などの単位を世界で決める国際会議、国際度量衡総会(長さや時間などの単位を世界で決める国際会議)も、この問題を取り上げている。
2022年の国際度量衡総会は、うるう秒で時刻が途切れることが、衛星の位置測定(GPSなど)・通信・送電などの大事なデジタルの仕組みに、重大な誤作動を起こすおそれがあるとした。
同じ決議は、うるう秒の入れ方が事業者ごとにばらばらで、決まったやり方がないことも挙げている。
だから2022年の総会は、ズレの許容の上限を2035年かそれより前に大きくする、と決めたんだ。
2000年問題みたいに、日付や時間まわりのバグは昔から話題だったから、やっぱりね、って感じではある。
でも2017年からうるう秒は入っていないよね。
それなのに、なぜ今になってやめることが決まったんだろう?
なぜ今、うるう秒の廃止が決まったのか

その理由は、地球の回転が速くなってきて、これまで一度もなかった「1秒引く」うるう秒が要るかもしれなくなったからなんだ。
近年、地球の自転は速くなる傾向にある。
自転が速くなると、時計から1秒を引く「負のうるう秒(自転が速くなったとき、時計から1秒を引くうるう秒)」が要る可能性が出てくる。
負のうるう秒では、23時59分58秒の次が、いきなり0時0分0秒になる。
そして人類は、この負のうるう秒をまだ一度も経験していないんだ。
2022年の総会の決議でも、これまで想定も試験もされていない初めての負のうるう秒が要るかもしれない、と書かれていた。
さらに2026年の国際度量衡総会の決議には、負のうるう秒が要る確率は近いうちに急に高まり、2035年までに30%だという数字が出ている。
30%は、だいたい3回に1回だ。
同じ決議は、負のうるう秒は大事な社会の仕組みに異常や混乱を起こすおそれが高い、とした。
身の回りの機械がネットでつながる仕組みや電力網などに頼るほど、うるう秒、とくに負のうるう秒での誤作動のおそれが高まる。
決めるのが遅れると、一部の利用者が国際的な時刻の代わりに衛星の時刻を使い始めるおそれがある、とも書かれている。
だから、2026年10月の第28回国際度量衡総会で、2027年5月20日から「連続したUTC」にする、つまりうるう秒を入れないと決めたんだ。
2027年5月20日は、2026年11月の時点で約半年後になる。
地球が速く回るようになったなら、今度は1秒引いて合わせることになる。
僕は、それ自体は当たり前の話だと思う。
ただ、1秒を足さなくなったら、地球とのズレはたまる一方に見えるよね。
そのズレは、どこまでためていいことになったんだろう?
足さなくなった1秒のズレは、この先どうなるのか

ズレは最大1時間、つまり3,600秒まで認めることになった。
決議は、地球の回転で決まる時刻と、時計の時刻の差の上限を、3,600秒(1時間)にしたんだ。
これまでは、ズレが0.9秒を超えないように直していたから、上限はその4,000倍になる。
この上限で、数世紀は時刻が途切れずに続く、と決議は書いている。
産総研(日本の時刻の研究機関)は、この結果、数百年から千年の単位でみても調整が要らなくなる、と見ている。
ただ、ズレが1時間に近づいたときにどうするかは、決議には書かれていない。
ニュースで「うるう時間」という呼び名を見た人もいると思う。
これは新聞などの報道で使われた言い方で、毎日新聞は「うるう時」と書いている。
この呼び名は決議の言葉ではなく、決議の本文には出てこないんだ。
そもそも時間ではなく秒が議題だから、「うるう時間」という言葉が出てこないのは妥当な話じゃないかなと、僕は思っている。
ちなみに、腕時計やスマホで違いを感じることはない。
地球の回転の観測も、天文学や地球を測る学問(測地学(地球の形や大きさなどを測って調べる学問))で、これからも続いていく。
産総研は、地球と原子時計の「どちらを優先するかではなく、両立させるための新しいルール作り」だと書いている。
ここは覚えておいてほしい。
うるう秒の廃止は、地球と機械を両立させるためのルール作り
うるう秒は27回、地球に時計を合わせてきた。
これからは、ズレを1時間までためておきながら、地球の回転の観測も続けていくんだ。
両立ができるように考えて廃止するのであれば、僕はいいことだと思う。
時計と地球の付き合い方は、これからも少しずつ変わっていくんだろう。
今回も未来を覗き見れたかな?
それじゃ、バイバイ!
参考にした資料
・Resolution 5 of the 28th CGPM (2026)(国際度量衡局 BIPM)
・Resolution 4 of the 27th CGPM (2022)(国際度量衡局 BIPM)
・うるう秒実施日一覧(情報通信研究機構 NICT)
・うるう秒がなくなる?世界が議論する「時刻のずれ」問題(産総研マガジン・2026年10月23日)
・How and why the leap second affected Cloudflare DNS(Cloudflare・2017年1月1日)
・Japan Quake May Have Shortened Earth Days, Moved Axis(NASA Jet Propulsion Laboratory・2011年3月14日)
・Global timekeeping rules change: leap second scrapped from 2027(Euronews・2026年10月16日)
・「うるう秒」来年5月20日廃止を決定…国際度量衡総会(読売新聞・2026年10月15日)
・半世紀続いた「うるう秒」なぜ廃止? 新たな「うるう時」とは(毎日新聞・2026年10月9日)



