来てほしくないのに、なぜか来てしまう月曜日。
日曜の夜、あれだけ「まだ来ないでくれ」と願っているのに、時計の針は一切の情けを見せずに月曜0時をまたいでいく。
僕らは真剣にこの理不尽さに向き合ったことがあるだろうか。
なぜ1週間は7日で、なぜ月曜という日がこんなにも僕らを憂鬱にさせるのか。
実はこの話、調べてみるとちゃんとした理由と、ちょっとした裏切りのような歴史が隠れていた。今回は、大真面目に月曜日の謎を追ってみようと思う。
それでは僕と一緒に未来を覗き見……いや、恐怖を覗き見てみよう。
ブルーマンデーの正体は、実は自由な日だった

ブルーマンデーという言葉、みんな一度は聞いたことがあると思う。
休み明けの憂鬱な月曜日を指す言葉で、日本ではサザエさん症候群という呼び方もあるくらい、広く浸透している。
ところが、この言葉の元になった英語圏の話を掘っていくと、まったく違う顔が見えてくる。
19世紀のイギリスでは、腕のいい職人たちの間で月曜日を勝手に休みにしてしまう「セント・マンデー(Saint Monday)」という慣習があったんだ。
彼らは火曜から土曜の夜まで働いて、日曜をきちんとした休日として過ごす。
そして土曜の夜と日曜の飲みすぎから立ち直るために、月曜をまるごと休んでしまう。
つまり月曜日は、労働者たちが自分たちで勝ち取った非公式の休日として扱われていた時代があったということだ。
この慣習は19世紀のあいだ、長く続いた。
やがて工場での労働が広まり、決まった時間に働く形が当たり前になっていく。
そうしてセント・マンデーは姿を消し、月曜日は再び労働の日に戻っていったんだ。
ブルーマンデーという言葉のブルーは、憂鬱という意味だけじゃなく、かつて労働から解放されて自由に過ごせた日、という遠い記憶の残響なのかもしれない。
恐怖を生むサザエさん症候群
ちなみに日本には、この感覚をさらにピンポイントで言い当てた言葉がある。
サザエさん症候群だ。
日曜夕方18時30分から放送されているアニメ『サザエさん』を見終えると、「あ、明日から仕事だ」と現実に引き戻されて憂鬱になる、あの感覚のことを指すらしい。
50年以上続く長寿番組で、放送時間もほぼ固定されているからこそ、日曜の終わりを告げる合図として国民的に共有される感覚になったというわけだ。
海の向こうのブルーマンデーも、日本のサザエさん症候群も、結局は同じ現象を指しているのに、片方は歴史の中の労働者の話、片方は国民的アニメの話というのが、なんだかおもしろい。
“月曜が一番憂鬱”には、まさかの裏側があった

ところで、「1年で一番憂鬱な日は1月の第3月曜日」という話を聞いたことはあるかな。
ブルーマンデーというワードとあわせて、まことしやかに語られることがある説だ。
2005年にイギリスの心理学者クリフ・アーナルという人物が発表した公式がもとになっている。
天候、借金の額、クリスマス休暇からの経過日数、新年の抱負が続かなくなるタイミングなど、いくつもの要素を組み合わせた数式で最も憂鬱な日を算出したという、なんとも大掛かりな話だ。
ところが、この公式には裏があった。
実はこの「研究」、イギリスの旅行会社スカイ・トラベルが、閑散期に旅行を予約してもらうためのPR戦略として発注したものだったんだ。
心理学者たちからは「変数が主観的すぎて科学的な意味をなしていない」と早々に否定されている。
中には「この手の数式は、PR会社がほぼ完成した形で持ってくるんだ」と証言している研究者までいる。
ちなみに「博士」として紹介されていたクリフ・アーナルは、当時カーディフ大学で夜間の学生を教えていた非常勤講師だったんだ。
大真面目な数式に見せかけて、その正体は旅行代理店のマーケティング戦略。
月曜日への僕らの憂鬱は、思わぬところで商業利用されていたというわけだ。
そもそもなぜ、1週間は7日で繰り返されるのか

ここまで来ると、そもそもなぜ1週間は7日なのかという根本的な疑問にぶつかる。
1年が365日なのは地球が太陽を1周する日数、1日が24時間なのは地球の自転周期。
どちらも天文学的な裏付けがある区切りだ。
でも7日という数字には、実はそこまで強い天文学的必然性がない。
有力な説は、古代バビロニアに由来する。
当時の人々は、夜空を動く7つの天体――土星、木星、火星、太陽、金星、水星、月――を、それぞれ神様が支配していると考えた。
この7つの天体が1日ずつ順番に支配する、という発想が、7日という周期のもとになったとされている。
月の満ち欠けが新月から上弦、満月、下弦とおよそ7日ごとに姿を変えることも、この数字を後押ししたようだ。
つまり1週間が7日なのは、天文学的にそうならざるを得なかった数字ではなく、古代の人々が空を見上げてなんとなくそう決めた数字が数千年かけて世界中に広まっただけ、ということになる。
僕らが毎週律儀に月曜日を迎えているのは、思っている以上に昔の人がそう決めたからという緩やかな理由に支えられているのだ。
月曜日は1番目なのか、2番目なのか

最後にもうひとつ、月曜日にまつわる地味に面白い話をしておきたい。
実はカレンダーで見たときの月曜日は1週間のうち、何番目の曜日かという問いにも、世界共通の答えはない。
国際標準化機構(ISO)が定めた国際規格では、1週間は月曜日から始まり日曜日で終わるとされていて、月曜日は堂々の1番目だ。
ところが日本語の「日月火水木金土」という数え方や、アメリカの多くのカレンダーでは、週は日曜日から始まる。
この場合、月曜日は2番目の日ということになる。
ポルトガル語や現代ギリシア語など、月曜日を「(週の)2番目の日」と直接呼ぶ言語まである。
つまり月曜日は、国際規格上は堂々の1番手なのに、僕らの日常の感覚では2番手に甘んじているという、なんともちぐはぐな立場に置かれている。
あれだけ僕らを憂鬱させておいて、実は自分の順位すらはっきりしていないというのは、なんだか少し滑稽な話だと思う。
憂鬱の正体は、案外いい加減だった
なぜか来てしまう月曜日への理不尽な憤りから始まったこの話も、掘っていくと、労働者たちが勝ち取った自由の日だったという歴史、旅行会社が仕掛けた擬似科学、古代バビロニア人が空を見上げて決めた数字、そして国によってバラバラな「順位」という、思いのほか奥深い話に行き着いた。
次に月曜日がやってきて憂鬱な気分になったときは、この理不尽さの裏にある、ちょっと間抜けで、でも確かに積み重なってきた歴史を、ふと思い出してみてほしい。
今回も未来を覗き見れたかな?それじゃ、バイバイ!
参考にした資料
・Is ‘Blue Monday’ the Most Depressing Day of the Year?(Snopes)
https://www.snopes.com/fact-check/false-blue-monday/
・Saint Monday(Encyclopaedia Britannica)
https://www.britannica.com/topic/Saint-Monday
・History of the two-day weekend offers lessons for today’s calls for a four-day week(The Conversation)
https://theconversation.com/history-of-the-two-day-weekend-offers-lessons-for-todays-calls-for-a-four-day-week-127382




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